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おくりびと

古今東西、どんな時代でも人間が生きているうちに行われる最大の儀式は3つある、といわれます。「生・結婚・死」がそれです。このうち、自ら決められないものは生と死の2つ。そこに共通するものは自分自身の手で「世話や後始末」が絶対に不可能なことですね。生も死も、だれかの手に支えられなければ成り立たないのです。

2008年9月に日本で公開された映画「おくりびと」は、その「死」に焦点をあてた内容でした。人は死したあと、こうしてだれかの世話を受けてその肉体をこの世から消していくのです。

どんな人でもかならず受けて通る道なのに、納棺される直前に清める仕事は、日本人のほとんどが知らなかったといってもいいでしょう。「おくりびと」は、こうした仕事をつぶさにみつめ、さらにその仕事人を通して生きていくこと、死んでいくことを見る者に考えさせるストーリーを備えています。

このサイトではすでに公開から足掛け4年が過ぎた映画「おくりびと」のすべてを紹介します。どんな時代になっても、そして映画公開から何年が過ぎようとも映画「おくりびと」が色褪せることはありません。

みなさんも映画を見て、このサイトを参考にしていただけたら、と思います。

映画のあらまし

プロのチェロ奏者として東京のオーケストラに職を得た小林大悟だったが、ある日その楽団が解散してしまい、夢を諦めることに。妻の美香とともに故郷の山形県酒田市へ帰ることを決めた。

酒田市で仕事を探していた大悟は、新聞に掲載されていたNKエージェントという会社の求人広告に目が止まった。「旅のお手伝い」という仕事内容を表す文言から、旅行代理店の求人と思い込んだところから話は急転直下に始まる。

「高給保障」、「実労時間僅か」などの条件にも惹かれた大悟は面接を受けるため会社に向かった。面接した社長は履歴書もろくに見ることなく、すぐに「採用」を告げた。さらにその場で名刺まで作らせてしまった。大悟はそのとき初めて仕事の内容が納棺と知り呆然とする。そう、「旅のお手伝い」とは黄泉の国への旅のことだったのである。社長に強引に押し切られて大悟は就職する。それでも帰宅後、妻には本当のことを言えず、「冠婚葬祭関係」と誤魔化すしかなかった。

翌日、大悟は出社早々、納棺の解説DVDの遺体役をさせられ散々な目に遭った。最初の現場では孤独死してから2週間経過した老女の遺体処理を任され、仕事の厳しさを痛いほど知る。

大悟は少しずつこの仕事に充実感を見出し始めていた。そのとき、噂で彼の仕事を知った幼馴染の親友で銭湯の息子・山下から「おまえ、もっとましな仕事に就けなかったのか」と白い目で見られる。さらに妻・美香には「汚らわしい仕事は辞めて」と懇願されてしまった。

大悟が態度を決められないうちに、美香は実家へ帰る決心をした。こんなこともあった。ある葬儀の現場で不良学生を更生させようとした列席者が大悟を指差し「この人みたいな仕事を一生するんか」と発言したことだ。大悟は大きなショックを受けた。とうとう退職する旨を社長に伝えようとするが、社長がこの仕事を始めたきっかけや独特の死生観を聞き、思いとどまることにした。

いくつもの遺体処理を務め、仕事にも慣れてきたころだった。突然、妻の美香が大悟の元に帰ってきた。美香は妊娠したのだった。再び今の仕事を辞めてくれと迫られた大悟が言い争いをしているとき、一本の電話が入った。それは、一人で銭湯を切り盛りしていた親友・山下の母、ツヤ子の死と納棺の依頼であった。

大悟は、いつも通り心を込めてツヤ子を納棺した。山下とその妻子、そして妻・美香の前で初めてみせる自分の仕事だった。細やかで心のこもった仕事は、親友にも妻にもこの仕事の大切さと大変さを納得させるに十分なものであった。

話はこれで終わるわけではなかった。ある日、大悟の元にすでに亡くなっている母に宛てた電報が届いた。それは大悟が子供の時に家を捨て出て行ったきり行方が分からなくなっていた父・淑希の死を伝えるものだった。

「なんで今さら父親なんだ!」とはじめは遺体の引き取りをも拒否した大悟。ところがそれを見かねて自分の過去を語り始めたのは、NKエージェントの古参女性事務員・上村だった。「私…ね、北海道の帯広に息子を置いたまま男に走ったことがあるのよ。今もそのまんまなのよ」―さらに上村は涙ながらに「最後のおとうさんの姿を見てあげて」と大悟に語りかけた。妻・美香も会いに行くことを勧め、大悟は社長の車を借りて父の遺体安置所に向かった。30年ぶりの対面は、自分の手で自分の父を納棺するその瞬間であった―。

主役・本木雅弘のことば

  • 「葬儀は一回きりで失敗は許されない。時間も限られるので緊張感を強いられる」
  • 「役者と納棺師は似ている。常に一回きりの現場という意味でも」
  • 「経験がものを言う仕事。知らなかった、では許されない」
  • 「納棺の儀式は死にまつわる混乱や興奮の状態を緩和することも多い」
  • 「インドのペナレスでは生と死が共存してひとつの風景をつくっている」
  • 「インドで死を思い生を実感したあと、納棺夫日記にめぐり会った」
  • 「死はありがたいこと。とても大切な出来事なのだ」
  • 「納棺師は世の中の隙間を埋めてくれる仕事」
  • 「役柄を演じるために実際の納棺に立ち合わせていただいた」
  • 「亡くなったおばあちゃんの足を拭いて差し上げる経験もした」
  • 「おばあちゃんの足は外と同じように冷たかった。それが現実だと思った」
  • 「化粧をして棺にお納めして…その場の空気がゆっくりと溶けだすような感覚があった」
  • 「納棺のときご遺族はほとんど話さない。それぞれが故人と対話している」
  • 「納棺の儀式は茶道と似ている。様式美を極めている」
  • 「お茶と納棺それぞれの作法に人間らしい配慮が存在している」
  • 「納棺の時間によって故人も遺族も死を納得する度合いを深めている」
  • 「納棺師は遺族に寄り添うのが基本。姿は見えていても黒子を演じている存在」
  • 「主人公がチェリストだったのは偶然の産物」
  • 「チェロは女性を身体を模して生まれた楽器と言われている」
  • 「チェリストが納棺師になったことは偶然であっても共通点は多い」
  • 「映画化を敬遠する人は多かったが小山さんのユーモアをまぜた脚本が力を貸してくれた」
  • 「山崎努さんの存在で映画の品格や奥行きがグッと広がった」
  • 「撮影中、山崎さんにはずっと打ちのめされっぱなしだった。本当に凄い人だった」
  • 「現場ではどこまでがコメディや皮肉なのか、劇的で優しくなのか、ずっと迷っていた」
  • 「まじめであるがゆえの笑いを探しつつ現実から目を離さない―が着地点だった」

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